ピロリ菌

ピロリ菌 TVCMなどでピロリ菌という言葉を聞くこともあるかと思いますが、これは正式にはヘリコバクター・ピロリと呼ばれている細菌で、主に胃の中で生息する4ミクロン(4/1000mm)ほどの病原微生物のことです。
人がこの細菌に感染するようになると、胃に慢性的な炎症を起こすリスクが高まると言われています。
その他、現在では胃・十二指腸潰瘍を発症した90%程の方にピロリ菌が感染していることがわかっています。

そもそも胃内は、強い酸性環境下にあることから、細菌そのものが生存していくにはなかなか厳しい状況です。
しかしピロリ菌は、ウレアーゼという酵素を産生することで、胃の粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解することができます。
そして、分解によって生じたアンモニアを胃酸によって中和することで胃内での生息が可能になっていると言われています。

感染経路について

胃の中にピロリ菌が入るまでの感染経路については、全てが明らかになったわけではありません。
ただピロリ菌が胃内に定着することから、おそらく幼児期に口から胃に入ることで感染するのだろうと推測されています。なぜなら幼児期は胃内の酸性が弱く、ピロリ菌が生き延びやすい環境下であるからです。
そして多くの場合、ご家族(保護者)の方から子どもへの家庭内感染が疑われ、なかでもピロリ菌に感染している大人から小さい子どもへの食べ物の口移しなどが原因ではないかと考えられています。

胃がんへの発症リスクが上昇

ピロリ菌に感染してすぐに何らかの症状が現れるということは可能性として少ないですが、やがて多くの感染者がヘリコバクター・ピロリ感染胃炎を引き起こしています。
これは、胃・十二指腸潰瘍、胃ポリープなどの胃の疾患、特発性血小板減少性紫斑病、慢性じんましんの原因となるものです。また一部では、萎縮性胃炎を経て胃がんを発生させることもあります。

このようなことからピロリ菌の除菌治療を行うことは、胃がんの発症リスクを下げることにもなります。当院では、感染の有無を確認するピロリ菌検査、感染が確認された場合のピロリ菌の除菌治療も行っています。

ピロリ菌検査ついて

ピロリ菌の検査は患者さんの訴えや症状から胃カメラやバリウムの検査を行い、ピロリ菌の感染(慢性胃炎)が疑われた場合に行います。検査方法としては胃カメラを利用した検査、血液、尿、便、呼気といった様々な方法があります。

除菌治療について

検査の結果、ピロリ菌の感染が確認されたら除菌治療を開始します。
基本は薬物療法ですが、その種類は胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害剤)と2種類の抗生物質の計3種類で、1日の服用回数とその期間は、朝・夕の1日2回で、これを1週間続けます。除菌判定(ピロリ菌が消えたかどうかの検査)は除菌のお薬内服後1カ月後から可能です。
ちなみに医師の指示通りに正しく服用していた場合でも、除菌に失敗することはあります。
なお初めて行った除菌治療(1次除菌薬)での除菌率は70%前後と言われています。

また初回の治療が不成功であれば、抗生物質の組み合わせを変更して再び行われます(2次除菌薬)。
この2次除菌薬による除菌率は約90%程度で、多くの方が1回もしくは2回の治療でピロリ菌の除菌に成功しています。